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アリスは不気味。

May 8, 2010

ティム・バートンの「アリス・イン・
ワンダーランド」が公開されていますね。
私が初めて不思議の国のアリスに触れたのは、
小学校の低学年の頃です。
もう大昔のことな上、過ぎ去ったことに
あまり興味を抱かないたちなので
前後のことは思い出せないのですが、
確か放課後、私以外の数人の児童と共に、
会議室のような場所で、ディズニーアニメ版
アリスのビデオを見ていました。

始めてみたアリスの感想は、

不気味

でした。
主人公アリスがうさぎを追いかけて
不思議な世界に迷い込む。
ここまでは許容範囲です。
しかし彼女には何の目的も無い。
普通、こういう異世界に迷い込む系の
お話なら、元の世界に戻るためだったり、
使命を授けられたりして、なにかしら
冒険の目的があるものですが、
アリスにはそんなものはありません。
ただうさぎを追いかけて異世界に翻弄
されて奇妙な住人からあーだこーだ
言われたりハートの女王とクロケーやって
裁判に参加して夢落ち。

なにこれ。

明確な起承転結がないもやもや感も
手伝って、ただただ不気味、でした。

高校生くらいとき、ゴス、ロリ系の
ファッションに酷く傾倒していたので
(随分カジュアルになりましたが今も好きです)
「その周辺の方々に愛好している人が多い
『アリス』に一度きちんと目を通そう」と
図書館で借りて読んだことがあります。
思ったよりも知的な感じでしたが、
やはり私の中の「アリスは不気味」という感覚が
消えることはありませんでした。

 

高校卒業後でしたでしょうか。
ある日の真夜中にそれは放送されていました。
それを見たとき「ああ、これだ!」と
思いました。

それは、チェコの映像作家、
ヤン・シュヴァンクマイエルの「アリス」です。
ストップモーション・アニメと実写を融合させた、
独特の猥雑さが魅力の作品です。
この作品には、私が幼少の頃、ディズニーアニメを
見たときに感じた「不気味さ」がありました。
アリスが追いかけるウサギは破れた腹から
詰め物を漏らす剥製のウサギで、
腹から懐中時計を取り出しては
付着している詰め物を音を立てて舐め取ります。
お茶会は気違いじみているとしか言い様がないし、
女王の命令ですぱすぱ、ごとん、と首が落ちる。
ファンシーさの欠片もありません。
(ぶたの赤ちゃんとまち針が刺さった針山が
はりねずみになるのは可愛いです。)

この作品は好き嫌いが分かれる作品です。
「こんなのアリスじゃない!」とお怒りになられる方も
多いのですが、私はあえてこれをおすすめします。
私にとってはこれこそが映画アリスなのです。

世間と自分の「アリス」のイメージに
乖離を感じる方は一度ご覧になっては
いかがでしょうか。
なかなか気持ち悪い(褒め言葉)ですよ。


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