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遊戯王と物語B  亡き人を訪ねて

冥界下り

王様と表に敗北したペガサスは、
千年眼を手に入れたいきさつを語りました。
何となくそれを読み返したときに私はふと
思いました。
「これって『冥界下り』だよね」と。

とある事情から主人公が死者の世界へと下る
お話が、様々な神話の中に見られます。
いろんな呼び方がありますが、
それをここでは便宜的に「冥界下り」と
呼ぶことにします。
単に「冥界下り」と言うときは、
イナンナあるいはイシュタルの
冥界下りのことを指すことが多いようですが、
一般的によく知られているのは
日本神話のイザナギ、そしてギリシャ神話の
オルフェウスのエピソードでしょう。
二つともとてもよく似たお話です。

イザナギの黄泉の国訪問

イザナギの妻、イザナミは火の神を産んだときの
大火傷が原因で死んでしまいました。
とても悲しく思ったイザナギは、イザナミを
連れ帰るため、黄泉へ向かいました。

イザナギは黄泉で妻と再会しますが、
イザナミはすでに黄泉の食べ物を口に
していたので帰ることはできません。
イザナミは「黄泉の神様と相談するので
少し待っていて下さい。その間、決してこちらを
覗かないで下さいね」と言って、奥へ姿を消しました。
しかし待ちきれなくなったイザナギは
約束を破ってしまいます。

彼が見たものは、腐りはてウジが湧き、
8柱の雷神がまとわりつく、おぞましい妻の姿でした。
恐ろしくなったイザナギは逃げ出します。
それに怒ったイザナミは黄泉の者と共に追いかけました。
なんとか逃げ切れたイザナギは、黄泉の入り口を
大きな岩で塞いでしまいました。

岩越しにイザナミは言いました。
「お前の国の人間を日に1000人殺してやる」
イザナギは言います。
「ならば私は日に1500の産屋を建てよう」

オルフェウスの竪琴

竪琴の名手、オルフェウスにはニンフの
エウリュディケという妻がいました。
しかしある日、エウリュディケは
毒蛇に噛まれて死んでしまいまいます。

とても悲しく思ったオルフェウスは、
妻を取り戻そうと冥府へ向かいました。
冥府は本来生者が立ち入れる場所ではありません。
しかしオルフェウスの竪琴の美しい音色に、
ステュクス川の渡し守も冥府の番犬も彼を
通してしまいます。
そしてとうとう冥府の王のところまで
たどり着きました。

オルフェウスの素晴らしい竪琴の
演奏に感動した冥府の王は、
彼の願いを聞き入れ、エウリュディケを
返してくれました。
そのときに冥府の王は、
「地上に戻るまで、絶対に振り返って
妻を見てはいけない」
と、オルフェウスに条件を出します。
しかしオルフェウスはもうすぐ地上、
というところで不安になったのか
振り返ってしまい、エウリュデケは冥府に
引き戻されてしまいました。

ペガサスとの共通点

読み比べてみると、イザナギとオルフェウスの
エピソードがほぼ同じかたちなのが
よく分かりますね。
箇条書きにすると、より一層分かりやすいと思います。

@妻を亡くす
A冥界へ向かう
B妻と再会
C見てはいけないものを見る
D妻との別離。独りで地上に戻る

これはペガサスのエピソードにも当てはまります。
まず彼は恋人のシンディアを亡くしています。
そしてペガサスはその「生死観」に惹かれて
エジプトの「死者の都」を訪れました。
BとCが逆転していますが、
クル・エルナ村の地下神殿で
見てはいけないもの(地下神殿と王の記憶の石版)を
見てしまったペガサスは、千年アイテムの
試練を受ける事となり、その結果、
シンディアと再会を果たしました
しかしそれはほんの一瞬でした。

どうでしょうか。
なかなか当てはまっていると
思いませんか?

散々こじつけを書き散らしたついでに
もうひとつこじつけを。

黄泉から戻ってきたイザナギは、
黄泉の穢れを落とすため、海で
禊(みそぎ)を行いました。
するとその穢れからたくさんの神々が生まれ、
最後にアマテラス、ツクヨミ、スサノオの
三貴子(みはしらのうずのみこ)と呼ばれる
3柱の尊い神様が生まれました。

ペガサスはエジプトから帰国後に
M&W、そして3枚の神のカードを作り出しています。
おもしろい偶然ですね。


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